基本 |
日本の学校で英語を勉強された方は、どうも助動詞 (auxiliary verbs) について誤解があるのではないかと思います。助動詞とはそもそも何でしょう。
私は生徒から「助動詞とはどういうものですか」と尋ねられると、いつもこう答えることにしています。
と。別の言い方をすれば、「味つけ」と言ってもいいと思います。
皆さんは "must = have to〜" というようにパターン化して習ったかもしれませんが、"must" と "have to" は同じではありません。
この2つの文は、内容は「そこへ行くこと」に変わりはないのですが、この文を言っている人の意識はかなり異なります。
命令文より強い助動詞 |
"should" や "had better" も、それを言っている人の気持ちが入ることになりますので、英和辞典の訳のように「〜したほうがいい」などというなまやさしい感じではありません。
日本の英語学習者は「命令文」のほうが強い感じがすると思っているようですが、実は "should" や "had better" を入れた文のほうがずっと強いのです。
この2つの文の言っている意図は b) のほうがずっと強いのです。
皆さんは欧米の雑誌などで広告をご覧になったことがあるでしょう。広告文では客にアクションを促す場合、すべて命令文です。
これを命令文ではなく "should" などを用いた文にすると、お客に対して押しつけがましい高圧的な感じになってしまいます。
「〜していいですか」と相手に尋ねる時も、尋ねるほうは相手をたてて、"May I use this phone?" と聞きますが、答えるほうは "Go ahead." という命令文です。これをもし "Yes, you may." などと答えると、とても偉そうな感じになってしまいます。
親が子供をしかる時、最初は "Don't do that." などと言っていますが、その程度では子供の方も「まだ親は本気ではないな」と思っています。ところが、親が "must" などを用い出すと、親の気持ちが入ってくるわけですから、子供のほうも「これはまずい」と思うわけです。
次の2つはどうでしょう。
最後に助動詞の意味合いを簡単にあげておきます。
can | 可能性 |
may | 許容 |
must | 必然性 |
should | "must" より弱い必然性 |
had better | "should" より少し強い必然性 |
"may" は「許容」と覚えれば「〜かもしれない」「〜してよい」という2つの訳語を覚える必要はありません。日本語では主語によって言い方が変わるだけで、英語の"may" の「許容」という意味あいは変わらないからです。
発信型英語(助動詞1) |
では、助動詞を使った表現の例を見てみましょう。
例題 | 君は時間を厳守すべきだ。 |
受験英語 | You must be punctual to the minute. |
まず、このように命令調ではなく、人の様子を表す場合は "He is punctual to minute." などと言えますが、"punctual" という語はもともと "on time" 「時間厳守」という意味ですので、"to the minute" は必要ありません。
そして "must" が問題です。もしあなたが相手に強制したいというような強い態度でいる場合は "You must be punctual." で結構ですが、そうでなければ単なる命令文で十分です。普通に「もっと時間を守ったら?」という意味あいで使っている場合は、次のようになります。
例題 | 君は時間を厳守すべきだ。 |
発信型英語 | Be punctual. |
発信型英語(助動詞2) |
例題 | 実地に応用できる知識を身につけておいた方がよい。 |
受験英語 | You should learn something that you can apply in the real world. |
日本語で「〜したほうがよい」「〜するべきだ」と言うような場面で、"had better" や "should" を使う人がよくいますが、英語で育った者がこのような "should" や "had better" を耳にすると、親に怒られた時のことを思い出します。
また、何かに「応用する」という意味で "apply" を使う場合は、"apply to〜" として用います。この英文には "to" が抜けています。
また、"learn something" も不自然です。"learn" の目的語には "language" や "how to〜" など具体的なものがくるほうがしっくりきます。
それから、日本語の「実地」を英語で "real world" としていますが、これでは「世の中」という意味になってしまい,言いたいことが少しずれてしまいます。
「対応できる知識」を英語にする場合、文字通り "practical knowledge" という言い方ができます。しかし、この場合「実地に応用できる」と言っているので、「知識」よりも「技術」ということを言いたいのでしょう。その場合は "skill" を使います。
この日本文は「どんな技術でも身につけておけば、何かの得になる」ということが言いたいわけでしょう。それを英語にすると下のようになります。
例題 | 実地に応用できる知識を身につけておいたほうがよい。 |
発信型英語 | Any skill is advantage. |
発信型英語(助動詞3) |
例題 | 博なんかに金を使うくらいなら捨ててしまったほうがましだ。 |
受験英語 | I might as will throw my money away as spend it in gambling. |
「〜したほうがましだ」という日本語を機械的に "might as well 〜 as" や "may as well〜 as" にしていますが、この言い方は英語が母語の人間はあまり使いません。
この文章は「どちらかというと〜したい」という "preference" を言いたいのですから "would rather... than 〜" を使うべきでしょう。
また、「賭博に金を使う」が "spend it in gambling" となっていますが、あとに事柄がくる場合は "spend it on" のほうがいいです。
以上のことをふまえてこの日本文を自然な英語にするとこうなります。
例題 | 賭博なんかに金を使うくらいなら捨ててしまったほうがましだ。 |
発信型英語 | I would rather throw my money away than spend it gambling. |