基本 |
皆さんは学校時代に一応は "the" と "a" という冠詞について勉強されたはずですが、実際のところ今ひとつ使い分けについてはカンみたいなものに頼っているのではないでしょうか。
冠詞は日本語にはないものですが、英語では名詞の意味に関わる大切なものです。
"the" から順番に説明しましょう。
共通に理解されているものにつく "the" |
"the" は、日本の学校の文法書にはこれまたいろいろ載っていますが、こう覚えてください。
the | = | based on the same experience |
日本語で言えば、"the" はお互いに何を言っているかわかっている、つまり共通の理解がある場合に用います。
例えば、あなたが教室に他の生徒といるとします。その教室でひとつ窓が開いている場合、閉めてほしい時は "Close the window." であって、"Close a window." ではありません。教室にいる人は皆、どの窓が開いているかわかっていますね。つまり、共通の理解をもとに話が成り立つわけです。
その教室で今度はドアが開いていても同じです。そこにいる人はどのドアが開いているかわかっているわけですから "Close a door." ではなく、"Close the door." となります。
同様に我々が "the moon" と言う場合は、誰もが知っている「お月様」のことを言っているわけです。例えば "Jupiter" (木星)にも "moon" はあります。しかし、我々が "the moon" と言う場合は、お互いの共通の理解に基づく「お月様」のことを指すわけです。
"the sun" という場合も、この大宇宙には他にも "sun" はありますが、「お天道様」は "the sun" なのです。
共通の理解があるものを指す "it" |
この "the" によく似ているのが、冠詞ではありませんが代名詞 "it" です。
"it" も話し手と聞き手、書き手と読み手に共通の理解がある上で初めて使えます。学校では、単に事例だけをあげて、時間・天候・気候は "it" で表すとだけ習われたはずですが、そういうことではなく、いずれも「共通の理解」ということに基づいています。
という場合、お互いに「時間」というものに言及しているという前提を踏まえています。時間を見た人はいませんが、時間というものが存在することは誰もが理解しているわけです。
何だか正体がわからなくても、お互いに共通の理解をしているものを表すことができるのが "it" です。上の文の場合、英語の感覚では、時間全体というものを "it" でとらえ "now" という切り方をすると「5時である」ということです。
距離も、見た人はいませんが、距離の存在は誰でも知っているわけです。ですから、どこからどこと切り取ってみれば数量化できます。例えば、
というように、お互いに今は距離について述べているということが了解されていて文が展開しているわけです。
共通の理解がない場合の "it" |
共通の理解がない場合は、たとえ "It's hot." という文でも、気候のことではないことがあるのです。
あなたと私が同じ部屋にいてお互いに背を向けて机で仕事をしています。私は今コーヒーを入れてきて、これからまさに飲むところですが、あなたは仕事に没頭していて私がコーヒーを入れてきたのに気づいていません。私がコーヒーを口にして "It's hot." と言ったとします。私はもちろんコーヒーを指して言ったのですが、私のことを見ていないあなたは室温のことだと思います。そしてエアコンの効いている部屋なので "No, it's not hot." と言うかもしれません。
いかがですか? "it" は共通の理解、お互いに何を言っているかわかっている場合に用いるということがおわかりいただけたと思います。
dialogue - "it" |
男性 | I want to make it with you. |
女性 | What is it? I don't understand it. |
しかし、強引な男性であればここで引き下がったりはしません、相手が共通の理解がないふりをしているのなら、共通の理解を作ってあげればいいのです。" Okay. I'll teach it." と言って切り返すかもしれません。
いかがですか? "it" の意味がつかめたでしょうか。
ちなみに..... |
オニゴッコの「オニ」は英語では "it" です。
「オニ」はそのゲームをしている人は皆知っていることですから "You are it." と言われたらあなたがオニなのです。
「"it" についてはこんなところです」というのを英語で言うと "That's it!" です。これも今まで述べてきたことを踏まえて "it" にひっかけています。
「わかりましたか?」は英語では "You've got it?" となります。
総称的、あるいは1つの "a(n)" |
さて、不定冠詞の a(n) はどのような意味合いでしょうか。
次の文を見てください。
この2つの文の "a horse" は、見た目には同じですが、表している意味は違います。
a) の文の "a horse" は、形は単数ですが、単に一頭の馬ではなく「馬というもの全体」を示しています。つまりa) の文章は、「馬というものは速く走るものだ」という普遍的な概念を表しているのです。
これを英語では "generic" と言います。a) の "a horse" は "a class of horses" あるいは "a school of horses" のことです。
"generic" の場合、口語では名詞に冠詞をつけずに次のように複数形で言うこともできます。
それに対し b) の文の "a horse" は、今、私の目の前にいる実際の一頭の馬を表しています。つまり、この "a" は数の "one" の代わりです。
要するに不定冠詞 "a(n)" は、数えられる名詞で "generic" を表す場合か、あるいは実際の数 "one" の代わりか、この2通りの意味合いがあるわけです。