不定詞


基本

 不定詞も日本の学校では名詞的用法とか形容詞的用法とか細かく教えているようですが、ここではやはり意味の面から説明してみます。

 不定詞はとにかくこれから先のことを指すものです

「to + 動詞の原形」という形で学校のころ習ったと思いますが、この "to" は実はもともとは前置詞の "to" と同じものです。"to" は方向性を示す前置詞ですから、その動詞のほうへ向かっているということなのです。

ですから、新聞の見出し語として、これから先のこと、言い換えればまだなされていないことを指すときにも、不定詞を用います。

Japanese Prime Minister to visit the U.S.

と書いてあれば、これから首相は訪米するということなのです。ちなみに新聞の見出しの場合、もしすでに訪米していれば現在形を用います。


「まだしていないこと」

Do you have anything to eat?

という文は「何か食べ物ある?」ということですが、当然まだ食べてはいないのです。皆さんがよく学校でやった例文はどうでしょう?

He stopped to smoke.

"stop" は後に不定詞が続くと、「やめる」という意味の他動詞ではなく「立ち止まる」という自動詞として機能します。

ここで大事なのは、日本語では「立ち止まってタバコをすった」とか「タバコをすうために立ち止まった」などと訳させますが、英語の感覚で言うと「立ち止まる」という動作がまずあって、その時点の先に「タバコをすう」という行為があるという程度の意味です。確実なのは、立ち止まった時点ではまだタバコをすっていないということです。


動名詞とのニュアンアスの違い

次の2つの文はどうでしょう。

a) To see is to belive.

b) Seeing is believing.
これは私が企業研修などを行って受講生に確かめたところによると、ほとんどの人が学校では「同じことだ」と習ったようです。もちろん根本の「百聞は一見にしかず」というアイディアは同じですが、実は少しニュアンスが違うのです。

前述のように不定詞はいつもこれから先のことを意味しますから、a) のニュアンスは "If you see, you will belive." という感じです。

それに対して b) は皆さんもご存じの動名詞(英語では "gerund")です。

この動名詞には、同じ動詞で構成されていても、不定詞のように時間的意味合いはまったくありません。つまり、動名詞は "the act of doing" という意味で、その名の通り動詞を名詞として機能させているだけです。

b) は、"The act of seeing means the act of beliving." という感じなのです。

次の2つの文は、不定詞と動名詞で表している内容がまったく違う例です。

a) To be a teacher is tough.

b) Being a teacher is tough.

a) は「これから先生になること」が大変なのであり、b) は「先生であること」つまり「先生という仕事」が大変なのです。

いかがですか。不定詞と動名詞ではこれだけ意味合いが異なります。

もうひとつ例を見てみましょう。

a) I forgot to mail the letter.

b) Iforgot mailing the letter.

a) はある過去の時点で「これから手紙を出すこと」を忘れた、つまり手紙を出さなかったのです。

b) は過去のある時点で「手紙を出すこと」を忘れた、つまり自分が手紙を出したか出さなかったか記憶にないということです。

とにかく不定詞は「文の中の時点でそこから先を表す」と覚えておいてください。日本の参考書を見ていますと、この「そこから先」を意識しないで不定詞が使われいるようです。

今まで説明してきたことを頭に入れて、次の例を見て下さい。


発信型英語

例題 そんなことをするなんて、君らしくない。
受験英語 It ill becomes you to do such a thing.

この英文は特に間違いはありませんが、「そんなことをするなんて」ということは、すでにしてしまったことを言っているのでしょうから、"to do such athing" ではありません。してしまったことを "that" で受けて "That doesn't become you." としたほうがわかりやすいでしょう。不定詞は必ずその時点(文の時間的位置)から先のことを意味するからです。

また、"ill becomes" という表現は、実際あまり使いません。"does not become" と否定文にするほうが自然です。「いつもの君らしくない」ということでしたら"yourself" を使って、"You are not yourself." という言い方をします。

「(本来の)自分らしく」という意味での "be onself" という表現も覚えておきましょう。

以上のことをふまえてより簡潔でわかりやすい英文にするとこうなります。

例題 そんなことをするなんて、君らしくない。
発信型英語 That doesn't become you.
You are not yourself.


発信型英語(助動詞1)

では、助動詞を使った表現の例を見てみましょう。

例題 彼はすっかり元気になり、また外出できるようになった。
受験英語 He has got well enough to go out again.

この英文も文法的に違いはありませんが、英語の感覚からみると日本文と違う内容を示している点があります。

"enough to go out again" とありますが、これでは「再び外出する」用事があって、それに十分なくらい元気が出たという内容を示してしまいます。

繰り返しますが、不定詞を使うのはこれから先のことを表す場合です。

日本語で「外出できるようになった」というだけでは、外出するのかしないのかはあくまでわかりませんね。

英語の場合、「病気が回復して元気になった」というのを "up and around" と表すことができます。"up" は "out of bed" ということですし、"around" も "out of bed" を表します。同じような意味の語を2つ続けて「すっかり元気になる」という意味で使います。

また、「病気が回復して元の状態に戻る」というのを別の表現で、"back on one's feet again" と言うことができます。この表現を使うと、病気から完全に回復した様子が出ます。

あるいは、「回復する」というのを "well" を使って表す時は、副詞の "fully" を一緒に使って言うことができます。

以上のことをふまえて自然な英語にすると、次のようになります。

例題 彼はすっかり元気になり、また外出できるようになった。
発信型英語 He is up and around.
Now he is back on his feet again.
He is fully well again now.


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