基本 |
私は、「Plain English の10ルール」の中で「なるべく能動態を使え」と主張していますが、もちろん何でもかんでも能動態しかだめだというわけではありません。
ただ問題だと思うのは、日本の学校で、機械的に能動態を受動態にあるいは受動態を能動態に変換させるパターン学習をさせることです。
英文の一番大事で基本的な型は「S+V+O」つまり "Somebody does something." です。これは力学的にも理にかなっているのです。まず行為を起こすものがあって、その行為が示され、その行為を受けるものが次に来ます。
S | → | O |
↑ | ||
V |
しかし、場合によっては、行為を起こすものより行為を受けるもののほうに重きを置きたい場合があります。その場合に、主語に行為を受けるものを持ってくるのが受動態というわけです。英語では、主語は文構造の中で一番重要なものだからです。
また、動作を行う対象をぼかしたい場合(誰がそうしたかわからないようにする場合など)にも用います。たとえば「彼は戦争で死んだ」と英語で言う場合、戦争で「誰が」殺したかはっきりわからないわけですから、
となります。
態の違いで意味が変わる場合 |
次の2つの英文をみて下さい。
この2つの文がまったく同じことを意味していると思われますか?
実は、この2つの文は意味はまったく異なるのです。
もう少し具体的にいうと、その話す2つの言語は人によって違うわけです。つまり、ある人は日本語と英語、ある人は英語と中国語というように。
この例を見ても、単純に能動態と受動態を書き換えさせることの問題点がわかりますね。
発信型英語 |
例題 | 私はその時彼に話しかけられた覚えはない。 |
受験英語 | I don't remember being spoken to by him then. |
これは動名詞の受動態を学ばせるための例文だと思いますが、英語を母語とする人は、"... remember being spoken to by him." などとは絶対に言いません。
「彼が(私に)話しかけてきた」は、動作を受ける対象に非常に重点を置く場合でも、動作を行う対象をぼかしたい場合でもありませんから、受動態にする必要はまったくありません。
この例文のアイディアを "remember" を使って言いたければ、その後を名詞節にして下のようになります。
例題 | 私はその時彼に話しかけられた覚えはない。 |
発信型英語 | I don't remember he spoke to me then. |