確かに文脈から意味を分析してみれば、分詞構文が "when" の意味を表したり、"because" の意味だったりするかもしれません。しかし、もし英語を母語にする人間がはっきりとそのような意味を相手に伝えたければ、分詞構文ではなく接続詞そのものを使ってしまいます。
ですから、たとえば文法学者がある英文の意味を分析する上で、この分詞構文はある接続詞に近い意味合いをもっている、などとするのは一向に構いませんが、それを学校で概念的に書き換えさせたりするのは問題です。
では、英語を母語とする者がどのような場合に分詞構文を用いるかと言えば、ある内容をもった主文に対して、それに付随した "background" とか、状況説明を加えたい場合です。極端な言い方をすれば、その部分はあってもなくても構わないのです。
というような場合は、あくまでも「昼食を食べている」ことに重点があって、「ラジオを聴く」は補足説明なのです。
発信型英語 |
例題 | 彼が酔っ払っていたとしても、彼の残酷さは許せない。 |
受験英語 | Granting that he was drunk, his cruelty cannon be excused. |
"Granting that ..." はひとつの慣用表現として教えられているようですが、もちろんこの文章は分詞構文です。そしていろいろと問題があります。
まず、英語では必ず主語が何かということを考えなければなりません。この場合 "Granting that ..." という行為は話者が主語になりますが、その次の "that" 以下の文は受動態になっているので、意味上の主語は "by"(省略されています)のあとに来ます。つまり、"his cruelty cannot be excused by me" となっているはずです。
このように、分詞の節は能動態でもう一方の主文は受動態という、主語が前後している文は非常にわかりづらいのです。英語で文を言ったり書いたりする場合、"logical subject"(意味上の主語)と "grammatical subject"(文法上の主語)とを必ず考えるようにしましょう。
この場合、"Granting that ..." と同じく主文のほうも話者を主語にして "I cannot excuse his cruelty." にするとピタッときます。
"Granting that ..." という能動態で話者の気持ちを出しておきながら次は受け身という形では、非常に不思議な感じがします。
次に表現を見てみましょう。
"grant" というのは非常にフォーマルな語句であり、何かを「認可する」「許可する」「与える」という感じになります。他の英語で言い換えると "agree to give" になります。たとえば、
のように使います。先程の例文のような場合には "grant" は使いません。
また、"excuse" は、あまり大したことではない軽いことを「許す」という意味で使われます。あるいは、人が目的語にくる場合などは「(何かから)免除してもらう」という意味で使われます。
という場合の "mistake" は、あまり大したことではない、内容になります。
また、かなりフォーマルな言い方ですが、
のようにも使われます。
もう少し深刻な内容を「許す」という場合には "pardon" を使います。
この例文は「彼が酔っ払っていたことは知っているけれども、その残酷さは許せない」ということでしょう。この「許せない」は、あくまでも話者の気持ちの問題です。気持ちをもっとよく表すのには、"excuse" よりも "forgive" のほうが適切です。
もう少し "personal feeling"(自分の気持ち)で「許せる、許せない」という感じになります。
というように使います。この場合、"I never excuse you." とは絶対に言いません。
以上を考え会わせると、こうなります。
例題 | 彼が酔っ払っていたとしても、彼の残酷さは許せない。 |
発信型英語 | I knew that he was drunk. But I cannot forgive him for his cruelty. |