基本 |
現在完了は日本の学校英文法では時制のひとつとして教えられているようですが、本書では母語立場から現在完了なるものを解説してみたいと思います。
完了形は確かに時制には違いないのですが、実は現在完了も物の見方 (perspective) の問題です。
現在完了は、過去の出来事とそれを述べている話者の意識を伝えているのです。
意識が過去と同じ枠組みにある |
次の2つの文を見て下さい。
この2つは「Johnの死」という事実を言っているのは同じですが、"perspective" が違うのです。
これは単に過去にこういうことがあったということを述べているだけで、それを述べている話者の意識は何も入っていないのです。
言い換えれば、時制的に見ると単に過去のことを言っているだけで、今それを述べている話者、つまり現在との関わりはまったくありません。
つまり、今ここで「"John" の死」を述べている人」と「"John" の死」は、同じ "framework of mind" の中にあるわけです。
a) | John's death | ← |
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|
b) |
|
|||
(□は話者 "framework of mind" を示す) |
英語というのは日本語に比べると、論理的できちっとした言葉です。しかし、この完了時制だけは、過去と現在が同居したきわめて曖昧な言い方なのです。
気持ちがともなう完了形 |
現在形の欄で、「私はずっと東京に住んでいる」が単に "permanent" という意味合いなら、"I have lived in Tokyo." ではなく "I live in Tokyo." を使って下さいと言いいました。
つまり、"I have lived in Tokyo." と言うと、"a permanent resident" という事実にプラスして、あなたの意識も述べていることになります。ですから、これを英語が母語の人間が聞くと、何か別のニュアンスがついていると思うのです。
例えば、ずっと東京人であることが「嬉しい」「誇らしい」とか、またはもう東京には「飽き飽きしている」とか、もちろんこの文だけでははっきりわかりませんが、とにかく何らかのニュアンス、つまりあなたの "framework of mind" に言及していることになります。
もう少し例をあげてみましょう。
この2つも前述の「"John" の死」と同じです。
とにかく、現在完了というのは、内容は過去のことであっても視点は今現在にあるということを覚えておいてください。
時制の2つの相を混ぜないこと |
時制がでてきたところで、もうひとつ英語において非常に大切な時の概念について説明しましょう。
英語はどんな場合でも、動詞や時を表す副詞に関して2つの時の概念が存在します。この概念は日本の英文法用語では「相」と呼ばれており、その2つとは "punctual" と "durative" です。
ここで大切なのは、英語ではこの2つの異なる時の概念を、同時にひとつの文に入れることはできないということです。次の文を見てください。
これは日本語的に見れば「この本をどのくらい借りていていいですか」という意味でまったくおかしくないのですが、英語的にみると異なる2つの時の概念が同居していておかしな文なのです。
"How long" というのはある期間を持った副詞句です。それに対して動詞 "borrow" は「借りる」という "action" 、つまり "punctual" です。副詞句が "durative" で動詞が "punctual" という、異なる2つの要素が1つの文に混合されているので良くない文という訳です。
この場合は動詞を "keep" という、時の幅を持った語に替えれば正しい文となります。
となります。 前述の完了形についても同じです。
の動詞の部分を
とはできません。なぜなら "die" は「死ぬ」という "punctual" の動詞であり、"for three years" は幅を持った時、つまり "durative" なので、2つの異なる時の概念が同居してしまうことになるからです。
では次の文はどうでしょう。
これは一見すると、"pass" は "punctual" であり、"this week" は "durative" であるように思えますが、"this week" は実は "punctual" です。
"week" 自体は「週」という時の幅のある語に見えますが、この文の場合は "this week" 全体でひとつの大きな点としてとらえているのです。もしこれが同じ "week" でも "for a week" とすると、今度は「一週間」という幅をもった "durative" として見ていることになります。
この "punctual/durative" はどの時制でも必ずつきまとう概念ですから注意してください。